遅くまで働く親応援 福島県郡山市のNPO代表理事・緑川浩郎さん 午後10時までの児童クラブ 1日に開設
福島県郡山市のNPO法人makana(マカナ)代表理事の緑川浩郎(ひろお)さん(49)は11月1日、夕食と学習支援が付いた放課後児童クラブを郡山市八山田西に開設する。子どもを預かる時間は一般より約3時間長い午後10時までで県内初。企業で採用を担当していたが、子育てのため希望する仕事を諦めたという女性の声を聞き、辞職して準備を進めてきた。夜遅くまで働く親が安心して子どもを預けられる環境を整え、夢に向かう人たちを後押しする。
オープンを間近に控え、緑川さんは福島市の自宅から毎日のように郡山市のクラブに通う。利用する親子の笑顔を思い浮かべながら、職員との打ち合わせや遊具製作に励む。
クリーニング業などを展開する県内企業に24年間勤務した。近年は管理職として各営業所の従業員採用を担っていた。
働く女性との会話が人生の転機となった。自社のシーツ洗濯工場に勤務する社員から、子育てを理由に本来希望する仕事ではなく早い時間に終われる工場を選んだと聞いた。シーツ交換のため訪れた病院の看護師からは「子どもを放課後児童クラブに迎えに行く時間があるので、思うように働けない」と打ち明けられた。
「働きたいと思う女性が存分に働ける環境をつくりたい」。昨秋、自身のフェイスブックで預かり時間が長い夕食付き児童クラブを開設したい旨を投稿すると、「こんな場所があれば助かる」「私の時も欲しかった」などと賛同するコメントが約50件届いた。緑川さんの思いを聞き、事務職員や看護師、社会保険労務士ら13人が今年4月、NPO法人を立ちあげた。
預かり時間は平日午後1時から、祝日と長期休暇は午前7時30分からで、いずれも午後10時まで。職員2人と学生ボランティアが常駐し、宿題などを見守る。提携する市内のスーパーや飲食店などから弁当の提供を受ける。仕事を終えた親の食事も用意する。
県子育て支援課によると、県内の大半の児童クラブは預かり時間が午後6時~7時まで。午後10時まで預かるのは例がなく、夕食提供も珍しいという。
緑川さんは7月に前職を辞めて開設準備に入ったが、約1カ月後に体調を崩した。リハビリなどに努めながら、遊具の作製や絵本集め、弁当を提供してくれる企業探しなどに奔走してきた。事業が軌道に乗れば、県内各地に同様のクラブを広める考えだ。
マカナはハワイ語で「贈り物」を意味する。「親や子どもにとって安心できる居場所を贈りたい」。夢を追う人たちの帰りを待つ場所にするつもりだ。
*夕食と学習支援付き放課後児童クラブ 対象は郡山市の富田東、行健二、行徳、明健の各小児童で、その他の学校に通う児童は要相談。定員40人。1カ月の利用料は、1人親世帯が週4、5回の利用で2万5千円、週1~3回で2万円。両親ともいる世帯は週4、5回で3万円、週1~3回で2万5千円。住所は郡山市八山田西5丁目298、佐久間青果敷地内。11月3日、輪投げや射的などを楽しめる入場無料の秋祭りを催す。